SUITE IBERIA
Albéniz por Cañizares
2007 SONY-BMG España
組曲『イベリア』
カニサレスのアルベニス
2007年 SONY-BMG スペイン
2007年 ソニー・ミュージック・ジャパン(日本盤)
イサーク・アルベニスは、19世紀スペインを代表する作曲家である。
彼の最高傑作と言われる作品、組曲「イベリア」はまさに彼の生涯最後の力を振り絞って書かれたものであり、アルベニスの遺作となった。
スペイン民謡の雰囲気を巧みに取り込み、組曲「イベリア」はアンダルシアの情景を美しく描き出している。組曲「イベリア」は、アルベニスの深く、激しいアンダルシアへの情熱をピアノで表現した芸術なのだ。
カニサレスがアルベニスの作品と初めて出会ったのは、音楽院で勉強をしていた、まだ若い頃だった。やがてアルベニスの音楽の美しさに惹かれて行き、1991年に大きな冒険に挑むこととなる。カニサレス25歳。この時期彼は、パコ・デ・ルシアのグループの一員として世界中で活躍していた。折しも、パコ・デ・ルシアは、後世に名を残すこととなる『アランフェス協奏曲』のレコーディングを目前に控えていたのだが、このアルバムのB面に是非アルベニスの組曲「イベリア」からの抜粋を収録したいという希望で、カニサレスにギターへの編曲を依頼したのだ。カニサレスは見事に編曲し、当時パコ・デ・ルシアのトリオに参加していたホセ・マリア・バンデーラと共に、3人で組曲「イベリア」から3曲を収録することとなった。
『この時に、いつの日か組曲「イベリア」の全12曲を全てギターに編曲するという挑戦を心に決めたのです』- カニサレス・インタビュー(2007年5月9日、エル・ムンド紙より)
2007年、カニサレスの夢は、『組曲「イベリア」- カニサレスによるアルベニス』で実現された。アルベニスの研究と作品の分析に、カニサレスは3年の歳月を費やした。ギターへの編曲は技術的にも困難を極め、その演奏はさらに複雑なものだった。そして、できあがったカニサレスの作品は、アルベニスの意図を余すところ無く表現し、ピアノの為に書かれた曲を見事2本のギターで奏でることに成功した。
『ピアノで演奏される全ての音をギターで演奏する事は不可能なのです。ギターとピアノは全く性質の異なる楽器ですし、なにより、組曲『イベリア』は、ポリフォニーの複雑な楽曲なのです』カニサレス・インタビュー(2007年5月9日、エル・ムンド紙より)
カニサレスは、作品のエッセンスを抽出し、そこに組曲「イベリア」の持つ、フラメンコの色合いを見事に引き出している。カニサレスが、全身全霊をこめて演奏したアルバム『組曲「イベリア」- カニサレスによるアルベニス』は、2008年スペイン・アカデミー賞のクラシック部門で最優秀賞を受賞した。