このアルバム『恋は魔術師 – カニサレスのファリャ』で、マエストロ・マヌエル・デ・ファリャの作品を扱った３部作が完成します。このアルバムには、『恋は魔術師』から１０曲と、『組曲「讃歌」』より５曲を選曲し、収録しました。

『恋は魔術師』は、私がこの３部作の中で扱ったファリャの作品の中で、最もフラメンコ的な響きの強い作品だと感じてます。アンダルシアの音階や、フラメンコの歌い手のようなメリスマが多用されています。これは、ファリャがフラメンコに造詣が深かった事を意味しています。私はこのアルバムのレコーディングで、楽曲全体とのバランスをとりつつも、ファリャの意図したフラメンコ的な要素を特に強調しながらギターを演奏しました。

『組曲「讃歌」』の『ペドレリアーナ』は、オーケストラのために書かれた楽曲で、これまでにギターで演奏された事が殆どない作品です。当然ながら、オーケストラの楽譜から、ギターへの編曲をしなければなりませんでした。オーケストラの様々な楽器の音色や、音の高低差をギターで表現するために、この３部作の別の作品の中にも用いた特製ギターを今回も使用しました。このギターは、３本の低音弦に１０弦ギターの低音弦を用いています。

私にとって、ファリャの作品を深く研究するというこの経験は、素晴らしい冒険でした。作品を再創造し、それを内側から体験することで、フラメンコに対する新しい視野を持つ事が出来ました。そしてそれは同時に、私が今後フラメンコを作曲する上での、新しい可能性を提示してくれたのです。

このアルバムをもって、私のファリャの３部作は完結します。それは、素晴らしい旅路でした。しかし、私のファリャ作品への興味と関心は益々深まるばかりです。また近い将来、皆様に新しいファリャの作品のギター編曲を発表出来る事を願って。

２０１４年５月

フアン・マヌエル・カニサレス