カニサレスのフラメンコ新譜 『洞窟の神話』スペインにてリリース
アルバムのタイトル『洞窟の神話』は、哲学者プラトンの「洞窟の比喩」に由来します。カニサレスの中に存在する二つの世界:自らのルーツとしてのフラメンコの世界と、知識として身につけた音楽の世界の対比が、まさにプラトンの説話のようだとカニサレスは強く感じています。インタビューでも自身のことばでこのように表現しています。
「フラメンコの伝統は私にとって、プラトンの比喩でいう洞窟の中の影のような存在でした。その柔らかな光と神秘的な音は、伝統という河を流れて私のもとにたどり着きました。それは、豊かで深い表現を備えた言語であり、私にとってかけがえのないインスピレーションの源となりました。フラメンコの音楽を始めてから数年後に、音楽院で音楽の基礎を学ぶことによって、先の比喩でいう太陽の光の言語を手に入れることができました。この新たな音楽的知識を身につけることにより、新しい音楽の世界を旅することができるようになりました」
長い音楽家としてのキャリアのなかで、カニサレスは実に見事にこのふたつの世界を行き来してきました。クラシック界での活躍の際たるものには、サー・サイモン・ラトル指揮ベルリンフィルとの共演や、NHK交響楽団との共演などが挙げられます。一方で歴史的にみても、フラメンコのトップギタリストといえる、パコ・デ・ルシアのセカンドギタリストとしての10年間の経験は、カニサレスがフラメンコの真髄にさらに近づくための大きな経験となりました。
8年の歳月を経て、満を持して今回発表された『洞窟の神話』は、『魂のストリング』(2010年)『プント・デ・エンクエントロ』(2000年)『イマンとルナの夜』(1997年)に続き、カニサレスの作曲による4枚目の作品となります。カニサレス本人が「クラシック音楽やフラメンコ音楽、そしてその他の多彩なジャンルの音楽に精通する人たちが、この作品を楽しんでくださることを願ってやみません」と語るように、このアルバムが数多くの人の心に届いてくれることを、私たちスタッフ一同、心より願っています。