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CD

新譜『カニサレスのロドリーゴ』

2019.06.02

カニサレスは、ソリストとして15作目となるアルバム『カニサレスのロドリーゴ』を発表しました。スペインの作曲家の作品をギターに編曲し、多重録音する「カニサレスのクラシックシリーズ」の第10作目となる作品です。

このアルバムには、『夕暮れのプレリュード』というロドリーゴ氏の未発表作品が収録されています。昨年、ロドリーゴ財団の保管庫の中から発見されたもので、このカニサレスの録音が、世界初録音となります

この作品は、1926年に作曲されたもので、テクニック的に非常に難しい作品であることに加え、随所にフラメンコ的なメロディーもあることから、カニサレスに白羽の矢が立ち、今回の世界初録音という大役を任せていただきました。

スペイン全国紙エル・パイスは、カニサレスの世界初録音についての話題を記事にし、オンライン版では実際のカニサレスの演奏とインタビューを動画で掲載しています。YouTubeのエル・パイス公式チャンネルより、是非この未発表作品をお楽しみください(インタビュー部分はスペイン語のみとなります)。

夕暮れのプレリュード
音楽:ホアキン・ロドリーゴ
ギター:カニサレス

このアルバムのライナーノーツにも掲載されている、カニサレスのロドリーゴ氏との出会いや、作品への思いをカニサレスの言葉でご紹介いたします。

このアルバムは、「カニサレスのクラシックシリーズ」の10作目となる作品で、スペインの偉大な作曲家ホアキン・ロドリーゴ(1901年生サグント/1999年没マドリード)へのオマージュです。『アランフェス協奏曲』の作曲家として知られるロドリーゴ氏は、私にオーケストラとの共演の扉を開いてくれました。
 
        私が初めてロドリーゴ氏にお会いしたのは、1991年のこと。私が約10年間にわたってセカンドギタリストをして共演していた、パコ・デ・ルシアの伝説の名盤『アランフェス協奏曲』の収録が、マドリード郊外のトレロドネスの劇場で行われた時でした。当時は、パコのギタートリオでツアーをしており、第1部でパコがアランフェス協奏曲を演奏し、第2部ではトリオでフラメンコの演目を披露していました。私は毎晩舞台の袖で、パコがオーケストラと演奏するアランフェス協奏曲を聴き、ギターという楽器の底知れない可能性に酔いしれ、アルゼンチンから日本まで世界各地の一流の劇場の観客を魅了するロドリーゴ氏の音楽の偉大さと普遍性を目の当たりにしてきました。
 
        それから20年の年月を経た2011年、私が『アランフェス協奏曲』でデビューするチャンスが巡って来ました。サー・サイモン・ラトル指揮、ベルリンフィルハーモニック管弦楽団との共演です。マドリードの王立劇場で開催された、ベルリンフィルの創立記念を祝うヨーロッパコンサートにソリストとして招待していただきましたが、これはベルリンフィルにとって、初のフラメンコギタリストとの共演となりました。この公演をきっかけに、私はその後世界各国のオーケストラと共演させていただく、多くの機会を得ることができました。
 
このアルバムの1曲目は、『アランフェス・マ・ペンセAranjuez ma pensée)』というギター曲です。これは、かの有名なアランフェス協奏曲の第2楽章のアダージョを、ロドリーゴ氏自身がギターソロ曲として編曲した作品です。今回は、特別な許可をいただき、オーケストラの各楽器で奏でられるメロディーを、トレモロというギターテクニックで伴奏し、オーケストラのバージョンをイメージさせる編曲を手がけました。
 
2曲目の『夕暮れのプレリュードPreludio al atardecer)』は、1926年にロドリーゴ氏がギター曲として作曲し、2018年に、音楽学者のハビエル・スアレス・パハレス氏によって発見された作品です。ロドリーゴ氏の娘であるセシリア・ロドリーゴさんのご厚意により、この作品の世界初録音をさせていただくことができました。この場をお借りして、心より御礼申し上げたいと思います。この楽譜の表紙には、このようなフレーズが残されています:「夕暮れにギターの息遣いが聴こえてくる…あちらの方、そう、アルハンブラの方から」この曲がアンダルシアの情景にインスピレーションを受けていることは間違いなく、曲のところどころには、非常にフラメンコ的なメロディーも見受けられます。
 
アンダルシアの4つの版画』『4つのピアノ曲』『3つの舞曲』『5つの16世紀の小品集』は、ロドリーゴ氏がもともとピアノ曲として作曲したものを、ロドリーゴ氏の没後20周年記念にあわせて今回特別にギター用に編曲した作品です。
 
 このアルバムは、ロドリーゴ氏と彼の素晴らしい音楽への私なりの感謝の気持ちをこめてつくりました。
 
 
2019年4月
フアン・マヌエル・カニサレス

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