“…海は私のインスピレーションの源。くだけた言葉で言えば、私にとって海に行かなかった1年は、無駄な1年とさえ言えます。私が地中海の街に生まれたことを思い出していただければ、お分かりになるでしょう…”
ホアキン・ロドリーゴ
マドリード、1949年3月1日
雑誌『ブルフラ』より
作品紹介
『ホアキン・ロドリーゴに捧げるギターとオーケストラのための地中海協奏曲』(原題:Concierto Mediterráneo para guitarra y orquesta a la memoria de Joaquín Rodrigo)は、私が作曲した2作目となるギターとオーケストラのための協奏曲です。この作品は、有名な『アランフェス協奏曲』の作曲者で、私にオーケストラの世界の扉を開いてくれた偉大な作曲家ホアキン・ロドリーゴ氏(1901年サグント生まれ/1999年マドリード没)へのオマージュです。
私が初めてロドリーゴ氏にお会いしたのは、今から27年前に遡ります。
1991年パコ・デ・ルシアが、自身のアルバム収録のために、マドリード郊外のトレロドネス劇場で『アランフェス協奏曲』を演奏した時のことでした。当時、パコ・デ・ルシアのセカンドギタリストだった私は、ギタートリオの世界ツアーに参加していました。このトリオでの演目は、第1部でパコがオーケストラと『アランフェス協奏曲』を演奏し、第2部で、パコと、ホセ・マリア・バンデーラと共に、フラメンコのレパートリーを演奏するという形態でした。ヨーロッパ、アジア、アメリカの大きな劇場の舞台袖で、パコの演奏する『アランフェス協奏曲』を毎晩聴き、ギターという楽器が秘める大きな可能性と、ロドリーゴ氏の音楽の普遍性を目の当たりにしてきました。
それから20年の月日を経て、私にもオーケストラと共演するチャンスが訪れました。サイモン・ラトル氏が指揮するベルリンフィルとの共演で、演目は『アランフェス協奏曲』でした。2011年にマドリードの王立劇場で開催された、ベルリンフィルの創立記念日に行われる「ヨーロッパコンサート」で、これはベルリンフィルにとっても初めてのフラメンコのミュージシャンとの共演となりました。この公演を機に、私は世界各国のオーケストラと共演するようになり、今では私の音楽活動を支える大きな柱の一つとなっています。
ロドリーゴ氏は、来年2019年に没後20周年を迎えます。この節目の年に、この偉大な作曲家に私なりのオマージュを捧げたいと考えました。そのひとつは、ロドリーゴのギター楽曲を収録したカニサレスのロドリーゴのアルバム制作(2019年春発表予定)、そしてもうひとつが、このギターとオーケストラのための『地中海協奏曲』の作曲です。この作品は、2018年11月30日から3日間、大野和士氏指揮、バルセロナ交響楽団と世界で初めて演奏します。
2018年11月
フアン・マヌエル・カニサレス