カニサレス作曲『地中海協奏曲』世界初演に向けての記者会見
バルセロナ交響楽団からの委嘱でカニサレスが作曲した『地中海協奏曲』が今週末バルセロナにて、大野和士氏の指揮で世界初演されます。この協奏曲は、『アランフェス協奏曲』を作曲したホアキン・ロドリーゴ氏に捧げる作品で、『アル・アンダルス協奏曲』に続く2作目の協奏曲となります。今回の作品でカニサレスは初めてオーケストレーション(オーケストラ用に編曲すること)にも挑戦しています
バルセロナ音楽堂(アウディトリ)での記者会見の様子
写真:© Mariko Ogura
世界初演に先駆けて、昨日は公演会場となるバルセロナ音楽堂(アウディトリ)のホワイエで、記者会見が行われました。記者会見では、この協奏曲を作曲した経緯や、先週のフランスでの『アル・アンダルス協奏曲』のフランス初演についても話が及びました。
『地中海協奏曲』のパート譜
写真:© Mariko Ogura
今回の『地中海協奏曲』の作曲について、カニサレスが自分の想いを語りました。
“…海は私のインスピレーションの源。くだけた言葉で言えば、私にとって海に行かなかった1年は、無駄な1年とさえ言えます。私が地中海の街に生まれたことを思い出していただければ、お分かりになるでしょう…”
ホアキン・ロドリーゴ
マドリード、1949年3月1日
雑誌『ブルフラ』より
『ホアキン・ロドリーゴに捧げるギターとオーケストラのための地中海協奏曲』(原題:Concierto Mediterráneopara guitarra y orquesta a la memoria de Joaquín Rodrigo)は、私が作曲した2作目となるギターとオーケストラのための協奏曲です。この作品は、有名な『アランフェス協奏曲』の作曲者で、私にオーケストラの世界の扉を開いてくれた偉大な作曲家ホアキン・ロドリーゴ氏(1901年サグント生まれ/1999年マドリード没)へのオマージュです。
私が初めてロドリーゴ氏にお会いしたのは、今から27年前に遡ります。
1991年パコ・デ・ルシアが、自身のアルバム収録のために、マドリード郊外のトレロドネス劇場で『アランフェス協奏曲』を演奏した時のことでした。当時、パコ・デ・ルシアのセカンドギタリストだった私は、ギタートリオの世界ツアーに参加していました。このトリオでの演目は、第1部でパコがオーケストラと『アランフェス協奏曲』を演奏し、第2部で、パコと、ホセ・マリア・バンデーラと共に、フラメンコのレパートリーを演奏するという形態でした。ヨーロッパ、アジア、アメリカの大きな劇場の舞台袖で、パコの演奏する『アランフェス協奏曲』を毎晩聴き、ギターという楽器が秘める大きな可能性と、ロドリーゴ氏の音楽の普遍性を目の当たりにしてきました。
それから20年の月日を経て、私にもオーケストラと共演するチャンスが訪れました。サイモン・ラトル氏が指揮するベルリンフィルとの共演で、演目は『アランフェス協奏曲』でした。2011年にマドリードの王立劇場で開催された、ベルリンフィルの創立記念日に行われる「ヨーロッパコンサート」で、これはベルリンフィルにとっても初めてのフラメンコのミュージシャンとの共演となりました。この公演を機に、私は世界各国のオーケストラと共演するようになり、今では私の音楽活動を支える大きな柱の一つとなっています。
ロドリーゴ氏は、来年2019年に没後20周年を迎えます。この節目の年に、この偉大な作曲家に私なりのオマージュを捧げたいと考えました。そのひとつは、ロドリーゴのギター楽曲を収録したカニサレスのロドリーゴのアルバム制作(2019年春発表予定)、そしてもうひとつが、このギターとオーケストラのための『地中海協奏曲』の作曲です。この作品は、2018年11月30日から3日間、大野和士氏指揮、バルセロナ交響楽団と世界で初めて演奏します。
フアン・マヌエル・カニサレス
昨日は『地中海協奏曲』の初めてのオーケストラリハーサルでした。通常、最初のリハーサルはソリストなしで進められますが、今回カニサレスはこの作品の作曲家として、客席からリハーサルの様子を見学しました。
バルセロナ交響楽団のリハーサル
写真:© Mariko Ogura
初演公演3日目となる12月2日(日)11時開演(スペイン時間)の公演は、カタルーニャ・ラジオで生放送され、インターネットラジオで世界中からライブ視聴できます。アプリなどのダウンロードは不要で、ネット環境があればどなたでも登録無しでご視聴いただけます。
日本時間では、12月2日(日)19時開演となります。
↓こちらのリンクよりご視聴ください(リンク先はカタルーニャ語です)
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